新製品立ち上げプロジェクト
与えられた期限は3ヵ月。
全社を盛り上げ、
新製品を立ち上げる。
わずか3ヵ月で、新製品が「売れる」仕組みを作り上げる。そんな無謀とも言えるミッションを命じられ、しかも見事に達成してしまった人々がいる。フィールド領域のエンジニアとマーケティングメンバーで構成された12名の精鋭チームは、未経験のスピード感の中でどのように戦略を練り、どのようにそれを実行に移したのか。タスクフォースでリーダーを務めた花井正樹を中心に、大車輪で動き回った4名に登場してもらい、その怒涛の日々を振り返る。
本ページ内でご紹介している「Paxata」は、現在DataRobot製品「DataRobot Data Prep」としてご提供しています。
詳しくはこちらをご確認ください。
<エンジニア>
外国語学部でスペイン語を専攻していた花井がアシストを選んだ理由は、「IT商社」というキーワードに惹かれたから。1996年に入社し、フィールド領域のエンジニアとして数々の製品を担当。現在、技術部門の部長としてチームを率いているが、自身は米国メーカーから、革新的な活躍をした「エバンジェリスト」に5年連続で選出されるなど、オンリーワンの地位を確固たるものにしている。
<エンジニア>
新卒入社2年目まではフィールド領域のエンジニア、その後はマーケティング一筋。営業がお客様へのプレゼンで使用する製品パンフレットや、Webページの制作を担っている。子育て中の古賀にとって、今回のタスクフォースの3ヵ月は、ちょうど年度替わりの多忙な時期でもあり、リモートワーク制度を活用して在宅勤務をしたこともあった。「子どもが『Paxata』という製品名を覚えるほどでした(笑)」と話す。
<エンジニア>
2009年入社。分析ツールのエンジニアとしてフィールド領域を4年間経験し、その最終年には、優秀社員として表彰された。その後、プリセールス業務専門のチームに異動。顧客アカウントエンジニアを経て、現在は「Paxata(パクサタ)」のフィールド領域を担当する業務に従事している。学生時代には体育会系アイスホッケー部に所属していただけあって、運動好き。入社後はジョギングが趣味になり、フルマラソンを完走できるまでになった。
<エンジニア>
アルバイト先の先輩がアシストに入社し、充実した日々を送っている姿を見て、自らもアシストを志望。何と入社後は、偶然その先輩と同じ部署に配属され、しかもトレーナーとして育成担当までしてもらえたとのこと。本案件では、営業への製品展開や、英文ドキュメントの翻訳、本国のメーカーとの折衝に携わった。
これまでアシストでは、お客様の情報システム部門に対して、世界中から選りすぐった数々のパッケージソフトウェアを販売してきた。メーカーのように開発にコストを割かず、独立系だからこそ選択肢に縛りがないため、お客様にとって最適なものを提案できるのがアシストの強みだった。だがここにきて、さらなる成長を見据えた時、情報システム部門以外の実務を担当されている現場部門にも、直接ニーズをお聞きして提案をしたい、と社長・大塚をはじめ経営陣は検討し始めていた。
中でも、ビッグデータやIoT、AIの活用が経営を左右するとまで言われている現在、企業のマーケティング部、経営企画部、製造営業部などでは、実際の業務ですぐにデータ活用できるパッケージソフトウェアを求めているのである。
そこで社内の取扱製品を洗い出したところ、「Paxata」という新製品が挙がってきた。現場部門の利用者がビッグデータを容易に統合・加工することができる、「データ・プレパレーション」という新しいカテゴリーの製品である。この製品は、確かにキラーコンテンツになり得る大きな可能性がある。この「Paxata」を売るには何が必要か。社長室に技術部門で豊富な経験を持つ、エンジニアの花井正樹が呼ばれた。
「社長から『Paxata』の拡販というミッションを与えられ、しかもその場で『3ヵ月で結果を出せ』と言われました。正直、唖然としましたね。プロモーションの戦略と実行を3ヵ月でまとめ上げた話など、社内で聞いたことがなかったので。ただ、だからこそ私の中の何かが燃えたというのもあった気がします。私はすぐにアシスト内にいるスペシャリストを頭に思い浮かべ、どのようなチーム編成にすべきか考え始めました。考え抜けるだけの知性と、周囲を巻き込める行動力と、そしてもちろんチームワークに徹せられる人間性を備えたメンバー。デスクに戻って、理想的な社員やその上司に連絡を入れるところからスタートしました」。
リーダーの花井がまず課題解決の目玉として考えたのは、「社内のコンサルティング営業を最大限に活用すべき」ということだった。営業の強いアシストとしては、そのリソースを最大限活用することが製品拡販の命運を握る。原点回帰と言ってもいいのかもしれない。花井は全国に散らばるフィールド領域のエンジニアを中心にメンバーを集めた。その中で、異彩を放つのがマーケティング担当の古賀さとみだろう。フィールド領域のエンジニアとしての経験もあったが、ここ15年は製品パンフレットや、Webページの制作といった、コミュニケーションの設計と開発に従事してきたエキスパートだ。
古賀は振り返る。「販売開始からずっと『Paxata』はWebサイトでブランディングと見込み顧客獲得のためのマーケティング活動を行っていました。『Paxata』はデータ・プレパレーションという全く新しいカテゴリーを切り拓く製品。まだ誰もその活用方法を知らないに等しいわけです。だからこそ、『Paxata』を導入されたお客様の活用事例を、営業からお客様に直接お伝えしていくことが最短距離だという大方針になりました」。
そこでプロジェクトメンバーとのディスカッションを通じて、潜在的に「Paxata」のお客様になりそうな業種、職種を全て並べあげ興味を惹く事例がどのようなものか検討した。花井は「10種のエピソードを厳選し、営業ツールに落とし込んでほしい」と古賀に依頼したという。「社内を盛り上げるという趣旨もあったので、物理的に目につくようなツールが必要でした。そこで、A4両面のチラシをデザインし、最終的には3ヵ月で11種類制作しました。およそ週に1種というペースです。パッケージソフトウェアのプロモーションには数多く携わりましたが、これほどのバリエーションのコンテンツを作ったのは初めてでした」。リリース直後から、チラシは数百枚の単位ですぐになくなった。社員が「Paxata」に興味を持っているというリアルな手応えを社内向けのマーケティングで実感した。
営業と共にお客様に製品の魅力を伝えるフィールド領域のエンジニアからは、かつて花井の下で働いていた染谷尚秀と、「Paxata」立ち上げ時に手を挙げて参加した福田桃子がアサインされた。2人に託されたのは、営業への「Paxata」情報の拡散だ。アシストの営業は、一つの製品に特化せず、お客様のニーズに合わせて様々な製品の提案を行う。だからこそ、販売してほしい製品については、まずはフィールド領域のエンジニアがコンサルティング営業に対して説明に出向くことが重要なのだと染谷は言う。
「制作したチラシをただ社内に並べておくだけではお客様に届きません。営業向けの事例勉強会を開いたり、時には営業と一緒になってお客様への提案方法を考えて訪問したりしました。そういった地道な活動が営業現場へ『Paxata』を浸透させて、案件増加につながったと思います」。
同じく、全国の営業への説明を繰り返しながら、「Paxata」を開発しているメーカーへ、既に「Paxata」を導入しているお客様へのヒアリングに力を注いだのが福田だった。「アシストは『Paxata』の日本総代理店というポジションでもあるため、日本マーケットの実情をメーカーに伝達する役割もあります。米国とはまた違ったニーズがあり、違った使い方がある。そこで、仕様をあらかじめ日本向けに変更してもらうなど、技術的な要求も頻繁に行いました」。福田は当初から「Paxata」の立ち上げに携わっていたが、このタスクフォースに参加して気がついたことがあったという。「自分で自分の仕事を制限してはいけない。ここまでやったんだから後は営業の仕事、とせずに、どこまででも並走すべきなんだと痛感しました」。
タスクフォースを結成した時に、花井はいくつかの目標値を設定していた。具体的な検討に移るレベルの案件を50件まで増やすこと。そして、全国で5件の受注を獲得すること。それがリーダーである花井なりの、「3ヵ月で結果を出せ」に対するアンサーだった。新製品を全社に知らしめ、その魅力を営業に理解させ、お客様にプレゼンしてもらい、そして受注まで漕ぎ着けることが並大抵のことではないと花井には分かっていた。だが、花井は信じたのだ。「Paxata」に秘められたポテンシャルを。そして、自らが声をかけたメンバーたちの能力を。「5件目の受注の知らせを聞いた時には、本当に嬉しかったですね。売り方に関する方針転換も大きく影響したと思いますが、何より、タスクフォースメンバーが限られた時間の中で必死になって考え、動き回ってくれた。
それが彼らにとっても、私にとっても、収穫だと思います」と花井は喜びを隠さない。
それまでWebページのアクセス解析やコンバージョン向上のための施策に傾注していた古賀は、お客様の活用事例の力、そして盛り上がった時のアシストのチームワークを改めて見直した。通常業務に戻った染谷は、「Paxata」拡販に身を捧げたことで、普段出会わないお客様の課題意識や解決のための手段を知った。福田は、これまで以上に営業に寄り添うことの重要さを学んだ。花井は言う。「アシストには『全員営業』というキーワードがあります。全ての社員は、まず第一にお客様のことを考え、お客様のためになることを実践するという意味です。今回のタスクフォースは、その言葉を再認識する良い機会になったとも言えますね」。怒涛としか言いようのない日々は確かに去った。去ったのだが、しかし何かが残っている。もちろんその「何か」はメンバーによって少しずつ違うだろう。そしてその「何か」こそが、いざという時に各人の経験値として、活きる日が来るはずである。